世界に誇れる有形文化財-昭和漫画館 青虫-

 こんにちは菅家Tです。今回は『第20回文化庁メディア芸術祭』で功労賞を受賞された『昭和漫画館青虫』(以下、青虫とします)さんについて色々とお話を伺ってきました。今回はいつも以上に長いです。因みに青虫さんの内覧はこんな素敵な感じです。
昭和漫画館青虫

文化庁メディア芸術祭とは?

文化庁メディア芸術祭(ぶんかちょうメディアげいじゅつさい、英語: Japan Media Arts Festival)は、文化庁メディア芸術祭実行委員会(文化庁、国立新美術館)が主催しているアートとエンターテインメントの祭典。芸術性と創造性をもつ優れたメディア芸術作品を表彰することを目的に、1997年度から毎年実施されている。また、受賞作を対象に展示会や関連イベントなどが行われる。
アート部門、エンターテインメント部門、アニメーション部門、マンガ部門 の4部門について、大賞・優秀賞・新人賞を選定。また、第5回(2001年)と第6回(2002年)には特別賞、第7回(2003年)以降は功労賞が授与されている。受賞者にはそれぞれトロフィー、賞金、そして文部科学大臣賞が贈呈される。-Wikipediaより引用-

今年の受賞作品でみると『シン・ゴジラ』『君の名は。』などのビッグネームが並んでいます。今回、青虫の館長の高野さんが受賞されたのが功労賞になります。
昭和漫画館青虫

何がどうなって高野さんが受賞された??

 高野さんへの最初の連絡は、文化庁の芸術祭の事務局から賞を受けるかどうか打診のご連絡だったそうです。高野さんはその賞を知らなかったから、「すいません…その賞のことから教えてください…」となったそうです(笑)さすが高野さん。そこで事務局の方とお話してみると『知ってる漫画作家からの推薦文があった』という事を知って合点したそうです。それで賞を受けることに決めて今回の運びになったそうです。功労賞は選考委員からの推薦によるもので、今回の受賞の大きな要因は『豪雪地のため冬季は閉館せざるをえない只見の地で、何の援助もなく運営努力を続けること10年余。福島県の復興運動を続けるマンガ家、永野のりこと協力したワークショップの開催などの活動にも取り組んだことなど』だそうです。※文化庁メディア芸術祭-高野 行央ページを参照しました。
昭和漫画館青虫
昭和漫画館青虫

なぜ、わざわざ只見で開館されたか聞いてみました

 「実は最初は信州での開業を考えていました(笑)。」「えーっ!!」
お話を伺うと高野さんは若い時は山登りしてたそうで、実家の横浜からのアクセスのこともあり、その辺りかなーとふわっと考えていたそうです。更に私が興味があったのは、【開業に至った理由】です。このような珍しい施設をしかも只見でやるって普通ではありえないと思っていました。その答えとして「箱に保管している本たちから『開けてくれー!』という声が聞こえてきた気がすると。まあ100%、幻聴なんですけど(笑)」とのこと。首都圏でレンタルスペースを借りても、結局開けることはない。開けることができる倉庫を探していた。それが段々と今の形を想像するようになったとのことです。それでたまたま気に入った物件が、只見町の隣町の金山町にあったのが最初のきっかけだそうです。「夏場に物件を決めちゃったからこんなに豪雪地帯だとは知らなかったんだよ。玄関がどこかわからなくなって焦ったよ(笑)」
 それでこの奥会津地域に月一回通うようになり、只見で古書を取り扱う 『たもかく』に通うようになった。その社長さんの著書に『只見町を本の町にしたい。あそこの旅館はサスペンス、あそこの飲食店は歴史物。そういうのおもしろいじゃない』という想いにふむふむとなり、「もし自分が只見で漫画館をやることになったら、社長さんの夢も叶うじゃないか。」という経緯だそうです。

構想から実現までは?

 「物件を探し始めるけれど開館は定年してからを考えていた。けど気に入った物件が出てしまい早期退職して始めちゃったテヘペロ。」(えーっ!!)奥様に相談したら「2年後だと子どもが手を離れるからOK」。(奥様すげえ。)
 青虫さんの建物はもともと、教会だったそうです。それまでも高野さんは色々物件を見ていたのですが、この物件を気に入ったポイントは、「只見はみんな道沿いに家がたっている。この物件は周りに家がない。そのロケーションが好みだったし、ワンフロアが広いのが良かった。」とのことです。しかし物件を買ったはいいけど、窓は割れている、壁も補修しなきゃいけない、屋根は全取っ替えが必要だったそうです。具体的な金額は伺っていませんが、決して安い買い物ではなかったことが想像できました。

首都圏では、できないこと。田舎でしかできないこと

 縁あって只見で開業されたのは理解できましたが、いわゆる図書館に近い施設は『単独事業での収益が厳しい』『都会のほうが利用者が多い』という一見、只見で開業するメリットがないように思えます。その疑問に高野さんが答えてくれました。「実は、お客さんの8割は漫画を読まないんですよ。(えーっ!!)読む人は目的が青虫の人。お客さんのほとんどが只見にたまたまきて、ちょこっと寄る人たち。だから貸本時代の本は興味がないから素通りするんです。」「そして私がこだわったのが『閉架式でなく、開架式』という形。つまり手にとって実際に見ることができること。(※閉架式とは国会図書館のような形式です。自分が借りたい本のタイトルを紙に書いて、司書に渡すと、ウィーンっと本が運ばれてきてくるやつです。)開架式を首都圏でやるには人が多すぎる。本が傷んでしまう。犯罪の可能性が高くなってしまう。だから只見みたいな田舎でしかできないだろうなと思っていた。」「昔の本は製本技術が発達していないから、簡単にバラバラになってしまう。意外に思われるかもしれないけど、只見は古書の保管に向いていると思う。都会だと暖房たくと結露してダメになってします。もしくは乾燥でゴワゴワしてしまう。青虫は古い建物だから空気がすこしづつ流れているから大丈夫なんじゃないかな。冬は営業しないし(笑)」
昭和漫画館青虫

漫画に対する情熱はどこからきているのか!!

 
 「有名な人に焦点があたるのは良いけど、陽の当たらない人の大切さを今までの人生経験で知った。情熱の理由をあえて言うならそれしか考えられないかな。筋立ってこーだからこーというわけにはいかない。そーゆー気持ちになったから仕方ないよね。」「貸本漫画家出身で有名になった人、例えば水木しげる、さいとう・たかお、白土三平。この人達の作品は復刻して見ることができる。それが貸本時代の作品でもそうでなくても意識せずに。」「天才というのはポッとでてこないと思っている。無名な作家が多くいるから刺激を受けるから良い作品ができる。そうして業界全体の裾野が広がって皆さんに認知される業界になると、天才と呼ばれる人がでてくるんじゃないかな。」「だから普通のルートでは貸本漫画までたどり着かない。好きな作家を辿っていけばたどり着くかもしれないけど、それでも無名な貸本作家までは辿り着くことはない。だから青虫をやるときには開架式にこだわった。閉架式だと自分と縁もない漫画に興味を持つことがない。開架式だと作家やタイトルで気になった本を読んでみようかと思える。知ってもらえるきっかけになる。懐かしいと思う世代より二世代後の世代に興味を持って欲しい。」

これからの青虫について

 
 「青虫って3つのハードルがあるんだよね。まず遠い(笑)、次に外観を見て帰る、その次に入館料を見て帰る。それを乗り越えた人だけが入館してくれる。それは良いのか悪いのかわかんないからそれで良いかなと思っている。」ここで気になっていた質問をすることにしました。それは『行政から援助をしてもらう気はないのでしょうか?』『青虫を個人的に直接応援したいけどその辺はどうでしょうか?』の2点。「受賞の理由に【何の援助もなく】となっているんだけど、それは僕が望んでやっていることだから悲観的なことじゃないんだよね。青虫は色んな研究に役立っている。先週も首都圏の大学が研究に来てくれたし、その中には海外の学生さんもいた。そりゃあ収支はマイナスになるからお金は欲しいよ。けどもし補助金を頂いたりしたら、何かを返さなきゃいけないし、頂いたら収支報告もしなきゃいけないしさ。世の中は等価交換だからね。お金の心配はなくなるかもしれないけど別の心配が必ず出てくる。自分がやりたいことができなくなるかもしれない。今の気に入っているところを変えなきゃいけないかもしれない。自分が出来る限りは自分でやりたいと思っている。例え【個人的な何も求めない応援の気持ちのお金】であっても受け取る気には今はならないかな。プライベートのお金との透明性がなくなって、すっきりしなくなるのがちょっと嫌だなー。応援したいって思ってくれる奇特な方がいらっしゃたら、昭和の懐かしい置物が不要になったら、いるいらないに関わらず声かけてくれると嬉しいです。あと収穫しすぎた野菜とかの現物だったら、とってもうれしいです。」
昭和漫画館青虫

取材を終えて

 
 やっぱり高野さんは素敵な方でした。それでいて強く優しい方でした。世界一貧しい大統領として有名になったムヒカ元大統領の好きな言葉に「私たちは発展するために生まれてきたわけではない、幸せになるために地球に生まれてきたのだ。」という言葉を思い出しました。また別の人の言葉で「人生は常に究極の二択の連続」という言葉があります。何かを決断するときに大切なのは【それをすることによって、誰が幸せになるのか?】を考えると良い結果になるのではないかと改めて思いました。
 1時間500円の入館料でフリードリンクですので、ちょこっと時間できたから非日常な空間で気軽にお茶しにいきましょう。2017年の青虫さんは現在冬眠中です。2018年は5月3日を予定しているようです。詳しくは青虫さんのHPにて
菅家T


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